---  Crate Engine Project 9  ---

 2005.04.13 Lucky 13

1969年生まれの彼女が、久しぶりにリフトから開放された。
外気をたっぷりと吸い込み、強烈な排気共鳴音を響かせながら、長時間かけてさらなる初期慣らしが続く。
初期慣らしといっても、チェックは入念に行われる。
ボンネット・フードの装着までは、
ダンボールで空気の流れを作る。
今回のプロジェクトにより、
サイド・ビューの印象が変わった。
ドラッグ・レースカーならば、これで完成と言える。


2005.04.14 サイド・パイプ

WEST金沢代表と、電話とFAXを使っての長時間の打ち合わせを行った。
テーマはサイド・パイプの形状に関して。
サイド・パイプからマフラーに至る部分は、これまでも数多くの案が提示され、
現時点まで、最も有力な方法であるオーバル・パイプ方式を採用しようとしてきた。
この方法は、技術的難易度は非常に高いが、不可能では無いと判断している。
しかし、後から気付いた重要なファクターで、その案が消滅しそうになっている。
重要なファクターとは、スタイリングの事だ。
図は、サイドパイプの検討内容。
A案がこれまで考えていた形状だ。
そもそもC3のドアの下は、美しいくびれの形状になっている。
ここにストレート・パイプを通すと、イメージが大きく変わってしまう。
B案は、A案の欠点を補うもの。
曲げ加工をする部分が多くなり、技術面・費用面の負担が大きくなる。
C案は、ボディイ形状に合わせたサイレンサを作成しようと言うもの。
9.4リッター・エンジンの消音をサイドで行うためには、
市販のサイド・マフラーの容量では完全に不足してしまう。
そこで、図のようなD型断面形状を検討した。
この方法であれば、サイドから排気を行った場合でも、充分な消音が可能ではないだろうか?
現在は、C案をベースに細部を煮詰めている。


2005.04.24 似て非なるもの

WESTを訪問。稲村工場長とサイド・パイプに関する意見を交わした。
試作したストレート・パイプを装着して眺めてみと、確かにボディ・ラインとは、すれが生じる。

ボディ形状に合わせたパイプも試作されていた。
こちらならばサイドパイプでも、C3のイメージが壊れない。
「後方排気にした場合の、グランド・クリアランスは?」
「サイレンサのスペースは充分か?」
「サイド排気の場合消音は充分か?」
「エンジンの振れの影響は?」
サイド・パイプを前に頭を抱える。
すべては、未知の領域。
そう、「やってみなければ分からない」のだ。
結果としてサイド・マフラーを作成した場合においても、市販のものとは存在理由が違う。
似て非なるものなのだ。
僕の意見は述べた。そして、結論はプロである彼らに委ねた。
吟味して提案されたことは、全て受け入れるつもりだ。
試作されたストレート・パイプ
勇ましい印象。
試作された曲げパイプ
形状は美しいが、もっと手前から曲げればさらにGOODか?
    
サイド・パイプを前に話は尽きない。
サイド排気、後方排気のいずれの場合も、
C2の放熱カバーのようなものを作成する必要があるだろう。
火傷をするのはごめんだから。

フロント・スタビライザーのブッシュに割れが生じていた。
走行距離は2000km以内のはずだ。
今のところ正常な右前輪側も、取り付けに無理がありそうだ。
彼女はいったいどんな経験をしてきたのだろう。
真実はいまだ霧の中だ。
現在、足回りはかなり煮詰まっているので、同じランチョのパーツで組みなおす事にする。

このあたりの仕事は、最初からコルベットの専門SHOPであるWESTに依頼しておけば手戻りがなかったのだろう。
左前輪のスタビのブッシュに亀裂が。
     右前輪はまだ問題がないが、取り付けに無理がありそうだ。
オイルパンをかわすために、パワステ・シリンダーを移動
したが、それに伴い各ロッドについても加工がなされている。
あくまでも、あるべき姿を求めるのだ。

ボンネット関係では、エアクリーナーは納まるようだ。
しかし、機械式ファンのカバーや、デーモンの前端部分がわずかに干渉するようだ。
このボンネット内部は、エアクリーナーへのフレッシュ・エアの導入と、
ラジエター後方の熱気の排出を目的として、加工されている。
今回のレイアウト変更により、どうもその部分が干渉するようだ。
こちらも、検討が必要だ。



2005.04.29 オーバルパイプ・後方排気
WESTを訪問。
金沢代表から検討結果の説明を受けた。

ここまで、さまざまな検討がなされた。
論議の時間は、作業そのものの時間よりも長かったかもしれない。
マフラーのエキスパートも招いての、プロ同士の意見交換も行われた。
そして昨夜、WEST内部での打ち合わせにより結論が導かれた。
結論は、オーバル・パイプの使用。そして後方排気となった。

サイド排気の場合、9.4リッターという排気量に対応するサイレンサーのサイズが問題となった。
アイアンのスマートなボディには、あまりにも大きくなりすぎるのだ。
また、サイド排気の場合の「バラッ、バラッ、バラッ」という音質も、
WEST製マフラーのチューニングされた音色を知っている者にとっては、マイナス・ポイントと言わざるを得ない。
そこまで考えると、やはり後方排気にすることにより、スタイリングと性能を満たすことができるという結論になる。
後方排気に関する要点をまとめてみる。
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1.リーフ・スプリングの下は、オーバ・ルパイプを使用してグランド・クリアランスを確保する。
2.サイレンサは大型のものを中央に配置し、サイレンサ内部で左右のパイプをX状に繋げる。
これは、トルクの増大と排気音のミキシングを目的としている。
3.テール・エンドはナンバープレートの下、ぎりぎりの場所に導く。
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そのほかにも、細部にわたって詰めが行われた。
マフラー1つと言っても、ここまで考え抜かなければ良いものは作れないのだ。
さて、既にオーバル・パイプが試作された。
プロジェクトは、最終段階にさしかかったのだ。
まだ、これから何があるかは分からない。
それでも、僕自身が久しぶりに6点式のシートベルトを締める日は、確実に近づいている。
     バケットシートに身を沈め、キーをひねるとZZ572が吼える。
クラッチをつないだ時、どんな世界が待っているのだろうか?
エンジン関係では、ブローバイの処理を検討中だ。
この排気量だけに、相当派手に噴いてくれそうだ。
427の行き先はまだ決定していない。
こいつは、明らかに高回転型のエンジンだった。

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