---  Crate Engine Project 13  ---

 2005.10.25 走行試験開始

エンジンの慣らしを兼ねた、走行試験が開始された。
既に250kmを走行している。
エグゾーストパイプにも焼き色が付き始めた。
あくまで仮ではあるが、ブレーキパッドはμの合う物を加工して装着した。
今後、ブレーキパッドをワンオフ作成する。
エグゾースト系のヒットを避けるため、タイヤもフロント・リア共にサイズアップされていた。
間もなく、タイヤをBSのRE050で再度組み直す予定だ。
室内に伝わるエンジン音は、運転していて気持ちの良い音色だ。

圧倒的にパワフルで、しかも実用的。
そして、確実に速い。

1969年式のボディに、現代のテクノロジと、最高の技術が融合する。
今までのC3の概念が崩れていく。
足回りは現行のままでマッチングが良さそうだ。
今のところ、水温にはかなりの余裕がある。
確実な事は、強大なパワーの前で、ファイナルが低すぎるようになっってしまった事だ。

プロジェクトは、今後の対策ポイントを洗い出す為の重要なフェーズに突入した。


2005.11.05 タイヤ入荷

新しいタイヤが入荷した。
サイズは、255/50-17。
外径を標準に近づけることで、エグゾースト系のヒットを避ける。
重量配分を考え、前後同一サイズとした。
ホイールは、Edelbrockをそのまま使用することにした。
このホイールは、17インチでありながら、クラシカルな雰囲気を保ってくれる。
性能を重視すれば選択は変わるのだが、性能だけを求めるならば、新車を買ったほうがいい。
いや、コルベットを選択しない方がいい。

世の中には、優秀な車がたくさんある。
僕も仕事の足としては、BMW745iを使用している。
Over200km/hでの巡航性能や、その速度粋でのコーナリング性能はすばらしい。
その状態で、絞ったボリュームのオーディオを楽しむことができる。
始動の儀式なんてものは無い。
暖機運転もしない。
どんなときも普通に乗り、どんなときも普通に走る。
だけど、どうだろう? それは趣味の車になりうるだろうか?
僕の答えは”NO!”だ。
「売っている物を所有する」
それだけで満足できるほど、僕の車の趣味は薄っぺらなものではない。

普通に乗れるすばらしい車を使っている。
だからこそ、本当の意味で1969Vetteを楽しむことができる。
「新車のスポーツカーを買えばいいじゃない」と、よく言われる。
でも、それでは僕の要件が満たされない。
僕の要件は、「1969年式のコルベットが、現代のテクノロジで走る」事だ。
これが完成することで、僕はより完璧な「不良」になることができる。
フェラーリでも、ポルシェでも、はなからこの要件を満たすことはできないのだ。

車を趣味とするのであれば、潔い方がいい。
1台の車に全てを求めてはいけない。
スポーティーさを演出し、高級ぶったファミリーカーなど、僕は欲しいとも思わない。


2005.12.02 ブレーキパッド

ワンオフしたブレーキパッドが出来上がり、走行テストを行った。
初期制動は、確かに向上している。
踏力は必要ではあるものの、一般的な使用には耐えうるだろう。
しかし、パニック・ブレーキではどうだ?
制動の一瞬の遅れで、結果が左右されるシーンもありうるだろう。
ここで、満足することも選択の一つであろうとは思う。
努力を重ねてくれたメカニックには大変申し訳ないが、さらに改善策を求めることにした。
エンジン・ユニットは非常に扱いやすい。
吸気系など未調整ではあるものの、怪物であることは間違いない。
テスト走行を終え、意見交換を重ねる。
「これでは不充分だ」

8ピストンのブレーキシステムが、
ホイールの中で虚しく光る。
ここまで積み重ねた努力を、完全な形で生かしたい。
チームの思いは一つだ
C3コブラにC5のミラー。
違和感がない。
しかも、視認性は格段に向上する。
入荷が始まったZ06パーツ。
来年は、Z06の熱波が襲来するのだろう。


2005.12.08 ブレーキ計算値

ブレーキブースターが7インチだとしても、制動力は充分得られる事ができることを調べ上げた。
ローターやキャリパーの構造や、適正なパッドを用いることにより、完全に克服できる問題のようだ。
フロントリヤ共に、ローターを大型化する。
キャリパーは、フロントを8potから6potに、リアを6potから4potに変更する。
どちらもトラスト製で、フロントがGTR、リアがスープラの流用だ。
ブラケットは新規に作成しなくてはならない。
ベルは114.3を120.65に改造する。
プロポーショニングバルブを追加して、安全な範囲でギリギリまで性能を高めたセッティングをする。
部品のブランドや見た目の構造にこだわるよりも、実質的な性能を重視する事にした。


その他にも、ブレーキラインの変更、マスターバッグ改造、ブレーキペダルの取り付け位置変更と、
相乗効果を狙っての改造が続く。
最終的にどのようなタッチのブレーキシステムが出来上がるかは、なんとも言い難いが、
充分なキャパシティがあるのならば、必ず使いこなしてみせる。



2005.12.19 C3余話

僕にとってのコルベットと言うと、C3(1968年〜1982年)以外には考えられない。
歴代モデルの中でももっとも個性的なボディー・デザインは、
1965年のニューヨークショーで発表されたコンセプトカー、マーコ・シャークUがベースになっている。

時は流れ、現在ではC6に発展したコルベットは、
世界のスポーツカーと対等に張り合える優等生に育っていったが、僕の食指は動こうとしない。
優秀さを競うのであれば、他に優秀な車はいくらでもあるからだ。

ノスタルジックなボディに暴力的なパワー。
それは、現代における速さとは別次元に生息する物体。

ディズニーランドのゴーカートだって、いつまでも初期型のC3のままなのが笑えるじゃないか。



2006.01.24 進化

WESTより作業の報告を受ける。
この期間の進化は著しい。
前回のテスト走行では、7インチに小型化せざるを得なかったブレーキ・ブースターの問題が露になった。
そこで、今回は薄型のパーツを使用し、9インチを確保した。
薄型と言っても、Tall-BlockであるZZ572の純正バルブ・カバーとの干渉を避けることには程遠い。
そこで、きるだけ小型のバルブカバーを使用することにした。
オイルキャップ部分や、オイル・ブリーザーパイプ取り付け部分の加工を施す。
そして、問題の干渉部分は大胆にカットし、新たな空間を作成する。
この状態で、内部のローラー・ロッカーが高速で動いても問題は発生しない。
ブレーキ本体は、ブレーキ・オイルの流量を考慮して国産の信頼できる物をチョイスした。
フロントにGTR用の6pot、リアにスープラの4potを使用するのは計画通りだ。
ブースターとの干渉を避ける為に、
切断されたバルブカバー。
全ての作業が手間ひまを惜しまぬ、ギリギリの現物あわせだ。
現物合わせの結果、
355mmサイズのローターが使用できる事が判明した。
C3の時代のオフセットは、現代のマシンと比べて大きい。

その為、ホイールのとキャリパーの干渉を避けることができた。
大口径のローターは、大きな効果が期待できる。

ステアリングのポジションを適正化する努力は、過去にも行われたが、充分ではなかった。
今回、完全なポジションを取る事ができるようになった。
虚勢ではなく、本当に走るための変更。
このマシンでは、初めて完璧なポジションが確保された。
メーターの視認性も向上した。
地味な作業だが、効果が大きい。
長い冬の終わりが見えてきた。



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